つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

Vuelta(アニポエvol.5「スポーツアニメ特集」)

Vuelta

 

蓋取れば茄子の酢漬けの五日目は食べ頃としてしずもりをりぬ

コンセント挿せばちひさく散る火花ゆめの甘さは遠くなりけり

風戦ぐアンダルシアを映すときブラウン管に立つ砂嵐

消失点 破線であつた白線がいつぽんとなり漕ぐ吾がゐる

ブレーキを握らぬ身体すれすれに傾がせて聞く歓声 旋回(vuelta)  

光りつつ降る雨、やがては土砂降りの雨 車輪は止まれば倒れてしまふ

汗ひとつかかぬ口調でキャスターは選手の心拍数を語りぬ

敬礼をしてやる程度には許すオズボーンの真黒き雄牛

見下ろせばむらがりてある家の灯の愛してるとか軽く言ふなよ

血を啜る顔つきのまま投げられし空のボトルの行方は知れず

 

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東京歌壇5月7日

公の字がやがてはハムになるまでを見守っている 骨さえなくて

 

東直子欄・選でした。ありがとうございました。

 

余談ですがこの日の新聞の東京歌壇上に掲載されていた「米国人カメラマンが撮った「フクシマ 不屈のサムライ」 江戸末期の撮影技法で「まるで幕末」」という記事、福島県の相馬野馬追に参加されている方々を江戸末期の技法でアメリカ人カメラマンが撮っていて、それが海外でも話題だという記事なのですが、掲載された実際の写真(相馬野馬追の鎧を着ている)がとてもインパクトがあって印象的でした。

大夕焼( #二次創作短詩ポスカラリー ・2)

                       
飛べぬなら鳥には死ぬも同じだと告げくる君の呼吸熱くて

狩るときの眼はいつぽんの矢のごとし黒き鏃(やじり)が獲物へ向かふ

心臓を抉れるほどに近づけばとろ火のごとく匂ふ肉叢(ししむら)

夜は降るやわらかき草育める短き雨の静けさのなか

殺したと顔を歪めてしまふのは人だけだらう 大夕焼くる

駆けながら腕は此方へ伸ばされつ馬のまなこを吾は欲せり



いちめんの青空ほどの輝きを額(ぬか)に掲げて君は嫁すひと

 

 

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幻の棹( #二次創作短詩ポスカラリー ・1)

 

「それはまた別の話」と締めらるる寓話のごとく会話は途切れ

陽を浴びし乳白釉の幹のいろ風吹けばふとほの明るみぬ

池水が翡翠のごとく凪ぐ真昼ときに人語は檻のごとしも

忘れてはまだをらぬゆゑいつまでもすつとぼけたる会話が続く

たまさかのふたり過ごせる春の日をモラトリアムといつか呼ぶべし

床柱にもたれてをればこめかみに響きくるあれは幻の棹

一幅の掛軸なれば音もなく巻かれて消ゆる一生にあらむ

 

   *

 

泣く程のあをぞらは無し地上とはなべて遺物ぞ 花投げ入れよ

泉の下にも都はありてほそき棹水面に差せばうちそよめかむ

 

 

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二次創作短歌非公式ガイドブック・ごあいさつ(または、金属バットを無理なく無駄なく振る方法について)

共有結晶別冊企画(二次創作短歌非公式ガイドブック。詳細はこちら)のごあいさつです。
好きな劇団はいつも開演前にごあいさつを書いた紙を配っていてそれを席で読むのが好きなのですが、そんな感じです。

別冊は企画書から書いていることもあり、前書きやら後書きやらキャプションやら正直鬱陶しいくらいに色々書いてるのですが、一方でそれのみで完結した「本」にするため、本の中には書かなかったこともありました。
つまりこれは場外乱闘、本来ならばルール違反ですが、必要な方に届けばいいなと思います。

 

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