つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

夜の森(poecrival2)

 

木の燃える夢を見たからあなたへの言葉はみんな通じないだろう

濡れてゆくみどりよみどり石鹸が泡立つように泣く人だった

ライナスの毛布みたいな朝焼けの沈黙 挽歌を信じそうだよ

指の爪ひとつひとつが鳥であり飛べと命じて色づけている

開けたってからっぽである快楽の梔子香る十三夜月

わたしからわたしはずっと逃げられない夜の森 めくらめっぽう歩く

 

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詩歌誌SNSpoecri」の短歌と俳句の公募企画に出した作品でした。短歌は7首まで投稿可能(連作である必要はない、と後で気が付きました)となっていたので6首出しています。

短歌の審査員は服部真里子さんと堀田季何さん。投稿作品から二人がそれぞれ10首を選ぶという形式でしたがお二人とも10首以外でよいと思ったもの(なんでしょうか。堀田さんは「予選通過作」として50首ほど、服部さんは「拾遺集」として30首ほど)を上げて頂いてます。俳句の方はこういうのはなかったので(おひとりは全句見てらっしゃったんでしょうか)、おふたりとも優しいなあとちょっとびっくりでした。

結果としては「濡れてゆくみどりよみどり~」が服部さんの10首選に、堀田さんの予選通過作になってます。他、「指の爪~」「わたしからわたしは~」が堀田さんの予選通過作に、「ライナスの~」「開けたって~」が服部さんの「拾遺集」に拾っていただいています。

なかなか見事に選が割れつつ、ということはつまり評価観点が相当違うであろうお二人にそれぞれ複数拾っていただけたのは色々ほっとする思いでした。ぶっちゃけミーハー精神だけで投稿したようなものですが、ありがとうございます。

 

なお全体の投稿結果は上記サイトにメンバー登録すれば閲覧可能です。

season words(CDTNK夏フェス2017)

わたくしがわたくしを殴る縁日の琉金 尾っぽのあざやかなこと

髪洗ふおふぇりや達にことば、ことば

湯上がりのような顔して改札を並んで抜けて明日の約束

真夜中のしづかな踊りぼくの影

ハンドソープ押しだすように陽はあふれ死者と生者の影淡くなる

突き出したかいなの群れよ みどり みどり

今日の日の終わりみおくるようにして髪よりおちる泡のいのちは

たぶんもうこの世にゐないのよ琉金

北極のけものの溶けてゆくすがた匙ゆるやかに運ばれてゆく

氷菓溶けるいつか化石となる日まで

手触りを確かめながら少しずつずらしてここらで止める 言葉を

うつくしいはずの箱庭 椅子を置く

 

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Twitterのイベント、「CDTNK夏フェス2017」に平田有さんと共作で連作を作成、さんかしました。連作は夏の季語(season words)から、髪洗ふ、氷菓琉金、をどり、箱庭、万緑の6つを選定(二人でそれぞれ好きなものを上げました)、ひとつの季語に短歌1首と俳句または川柳1句を分担する形で作っています。

拙作は

湯上がりのような顔して改札を並んで抜けて明日の約束 (季語・をどり)

ハンドソープ押しだすように陽はあふれ死者と生者の影淡くなる (季語・万緑)

手触りを確かめながら少しずつずらしてここらで止める 言葉を (季語・箱庭)

髪洗ふおふぇりや達にことば、ことば (季語・髪洗ふ)

たぶんもうこの世にゐないのよ琉金 (季語・琉金

氷菓溶けるいつか化石となる日まで (季語・氷菓

 

になります。

平田さんが以前から川柳を作っているのとここ最近ちょっと俳句に興味があったので混ぜてやってみようかと思ったのですが、季語からのジャンプの仕方からも分かる通り、普段やっていない俳句が予想通り難しかったです。あと、二人の作風というか定型感覚は結構対照的だと思っていたので、題詠というのもあったとはいえ、連作としてうまくまとまったのが意外でもあり面白かったです。

 

なおイベント最後のグランドフィナーレ(題詠・夏)で詠んだ歌はこちら。

灰のまままだ立っている「あの夏」と呼ばれる夏のひそやかな熱