つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

第三十回歌壇賞および第一回笹井宏之賞応募作について

第三十回歌壇賞応募作が候補作に、また第一回笹井宏之賞応募作が最終選考候補作になりました。
歌壇賞応募作の「草の心臓」(連作30首)については30首全首が2019年歌壇2月号に、笹井宏之賞応募作の「くりかえし落日」(連作50首)については10首抄がねむらない樹vol.2に掲載されています。
 「草の心臓」については選考座談会で言及いただきました。連作について構成含め評を頂く機会はこれまでほぼ皆無だったので大変ありがたかったです。

なお「草の心臓」は文語混じり旧かな遣い、「くりかえし落日」は口語新かな遣いの短歌連作になります。機会があればお読み頂ければ幸いです。

  

 

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砂漠の雪(角笛4)

砂漠の雪

 

いえそれはあなたの美しい砂漠だって余白は言葉ではない

 

歳時記はついに晩冬へと至り特急列車を見送るホーム

 

二―メラ―の警告をみな口にする泡立ちながらジャムは煮詰まる

 

輪郭が滲んでしまう青空は目を傷ませる光の反射

 

ジェイコブズ・ラダー 地上は寒いからどんな言葉も手垢まみれだ

 

繋がれて生きるしかない生き物の怒り、いかづち、釣り針は金

 

それぞれの記憶の雪の重たさは異なったまま歌会終わる

 

 

それはまだニンゲンですか千年後名もない星をつなげる右手

(下の句共通の付け句企画)

 

昨年末から配布されていた山羊座生まれの短歌ネプリ「角笛4」掲載作でした。

主催の知己凜さん、ありがとうございました。

豊かな果実(色短歌ネプリ Tanka × Color)

豊かな果実

 

もうはけた芝居のために音もなく銀杏の黄色まだ降っている

 

きらきらは満身創痍の言い換えでキレートレモンは硝子の小瓶

 

豊穣、と指し示される町中の鳥も食べない果樹の果実

 

スープ屋のクリームシチューに柚子の匂い夜の深さを両手で受ける

 

 

色彩がテーマのネプリ企画「色短歌ネプリ Tanka × Color」の寄稿作品でした。主催のたかはしりおこさん、有難うございます。

「白」「黒」「紫」「青」「緑」「黄」「橙」「赤」から好きな色を選んで作るということで、たぶん青を詠む方が多いのだろうなとそこは外して自分でもあまり詠んだ記憶がない黄色にしてみたのですが(というより色を詠むことがそもそも少ないような)、蓋を開けてみると予想通り青を詠んだ作品が多くてちょっと笑ってしまいました。

 

美とエゴとの往復運動の間に――鷺沢朱理『ラプソディーとセレナーデ』感想

 

「さやうでございまする。私は総じて、見たものでなければ描けませぬ。よし描けても、得心が参りませぬ。それでは描けぬも同じ事でございませぬか。」

                          芥川龍之介地獄変』 より

 

この文章の概要:

 鷺沢朱理の歌集『ラプソディーとセレナーデ』は古今東西の様々な題材をモチーフにしつつ、美とそれに執着する創作者という主題をどこまでも展開させていった歌集ではないか。

 

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