つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

花図鑑(うたつかい32号)

花図鑑

 

わたし、も。もうそれ以上なにひとつ話したくない陽だまりでした

あたたかな雨ふるようなその雨を身体ぜんぶで受け取るような

沈黙を分類すれば色刷りの花の図鑑は閉じられぬまま

なんという激しい拒絶いま海は空より深い青色である

錆び付いた水門だからくりかえし両の鎖骨をゆっくりと圧す

 

テーマ詠
憎んでもいいよって言ってほしかった手首の骨を鎖はすべる

(題詠:「身につけるもの」)

 

テーマ詠は再録でした。

お箸、二膳ください(短歌のふんどし)

コンビニ店舗は蠱毒の虫と同じだと誰か書いてた 青になったよ

 

捨てるべき場所できちんと捨てられるため開けられる爪楊枝いっぽん

 

お箸二膳ください。背筋は伸ばしなさい。人間を人間として見なさい。

 

ルフレジありますというのぼり旗も項垂れぼくらが立つ夢の跡

 

どうしても魔法が効かない時もあるいつからかある値引きコーナー

 

再利用しにくいサイズのビニールの袋が鳴ってちょっと明るい

 

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紫陽花の国(みずつき8)

砂にまみれこの世にまみれ狂うとき一筋ごとに髪は膨らむ


はつなつのなまぬるい水流れだす水とは水の体液のこと


ティーポットの茶葉が膨らんでゆくのを甦るとは言わないでしょう?


濡れ髪を獣のようにまとわせて嵐は外を過ぎるものだと


いえここは紫陽花の国、雨の国、水道の水ほそく細りゆく国


日本人が滅ぼす国にずっとずっと生きていたのだ ドライヤーを切る

 

千原こはぎさんの主催する「水」がテーマのネットプリント企画「みずつき」、今年も参加させて頂きました。ネットプリント全体のweb閲覧版・PDFはこちら

千原こはぎさん、ありがとうございました。