つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

うた

私家版歌集「ヴァーチャル・リアリティー・ボックス」について

2017年11月に頒布開始した私家版歌集「ヴァーチャル・リアリティー・ボックス」についての情報です。

ねむらない樹6号・読者投稿欄

ぬるい雨 頭皮を進む指先がふいに力を抜いて離れる 内山昌太選・佳作でした。ありがとうございました。

橋を渡る【アンソロジー寄稿・web再録】

短歌連作 橋を渡る(ZABADAK「五つの橋」に) 2016年5月頒布開始同人誌「There's a vison - A Tribute to ZABADAK-」(冬青・編)寄稿(ライナーノーツ) (一部旧かな遣いの誤りを修正。なお私家版歌集『ヴァーチャル・リアリティー・ボックス』には同連作…

草の心臓(第三十回歌壇賞佳作・再録)

第三十回歌壇賞に出した短歌連作「草の心臓」(30首)の再録です。 当該連作は『歌壇』2019年2月号に全首掲載されました。 連作はアイルランドの民謡などをモチーフにしているのですが、この度、当該連作について、日本アイルランド協会会報第106号の佐藤亨…

街の神話(うたつかい34)

新年の道路はいつもより広くわたしは角を落としたようだ ひとの子も狼の子もあてどない顔をしている夜の閑散 干からびた冬のまなこの瞬けば千光年の残業ひかる エンターキー押されたままで伸びてゆく白い改行 春が来ていた あ、と息吸うとき喉の奥にある南京…

こともなし(うたつかい33号)

わたくしを地上へ落とす風が吹くこの世はこともなし こともなし どの窓も古い映画のようになる列車は橋を渡り続ける 抑えられ少しふるえた掌はちいさな昼の蝙蝠の羽根 おろかものばかりではない僕たちだ青を仰げばどこまでも青 夜。(海を漂うラッコたちのた…

月刊うたらば1月号

一斉に手を上げなさいきらきらとスノードームに明るい吹雪 テーマは雪でした。ありがとうございます。 うたらば|短歌×写真のフリーペーパー

氷について

バルコンの手摺も冷ゆる夕暮れの森をあんまり見ては駄目だよ まうずつと広がつてゐるのは曇天。窓は翼の形に開く わたしさへ黙つてゐれば破れないうつくしい肖像画いちまい パントマイム伝はらぬまま更くる夜の子守唄つてみんな寂しゑ 怒りだと気付けばさび…

カノン(角笛5)

死者を思って触れてください。そう告げる声の深さに削られる岩 (ハラスメントが)(どのハラスメントを語ったら?)初雪はくりかえし降るから 暗闇に舌は静かに横たわり渡せる炎はいつだってひとつ コラール 幻のろうそくの火が暗闇のなか流れはじめる 産ま…

花図鑑(うたつかい32号)

花図鑑 わたし、も。もうそれ以上なにひとつ話したくない陽だまりでした あたたかな雨ふるようなその雨を身体ぜんぶで受け取るような 沈黙を分類すれば色刷りの花の図鑑は閉じられぬまま なんという激しい拒絶いま海は空より深い青色である 錆び付いた水門だ…

お箸、二膳ください(短歌のふんどし)

コンビニ店舗は蠱毒の虫と同じだと誰か書いてた 青になったよ 捨てるべき場所できちんと捨てられるため開けられる爪楊枝いっぽん お箸二膳ください。背筋は伸ばしなさい。人間を人間として見なさい。 セルフレジありますというのぼり旗も項垂れぼくらが立つ…

ねむらない樹vol.3 読者投稿欄

まなうらをもやしつづけるまぼろしの炎よおまえのせかいはきれい 野口あや子選、佳作でした。ありがとうございます。

紫陽花の国(みずつき8)

砂にまみれこの世にまみれ狂うとき一筋ごとに髪は膨らむ はつなつのなまぬるい水流れだす水とは水の体液のこと ティーポットの茶葉が膨らんでゆくのを甦るとは言わないでしょう? 濡れ髪を獣のようにまとわせて嵐は外を過ぎるものだと いえここは紫陽花の国…

東京歌壇6月9日

死者の名のひとつひとつに初夏の風あてるため正座するひと 東直子欄掲載でした。ありがとうございます。

東京歌壇3月3日

焼け野原背負ったままで息を吐くほのびかりする満月がある 東直子欄 選でした。ありがとうございます。

ねむらない樹vol.2 読者投稿

ぐずぐずと紅茶に溶かす薔薇のジャム あなたも夕日も遠いほど良い 内山昌太選・準特選でした。ありがとうございます。

砂漠の雪(角笛4)

砂漠の雪 いえそれはあなたの美しい砂漠だって余白は言葉ではない 歳時記はついに晩冬へと至り特急列車を見送るホーム 二―メラ―の警告をみな口にする泡立ちながらジャムは煮詰まる 輪郭が滲んでしまう青空は目を傷ませる光の反射 ジェイコブズ・ラダー 地上…

豊かな果実(色短歌ネプリ Tanka × Color)

豊かな果実 もうはけた芝居のために音もなく銀杏の黄色まだ降っている きらきらは満身創痍の言い換えでキレートレモンは硝子の小瓶 豊穣、と指し示される町中の鳥も食べない果樹の果実 スープ屋のクリームシチューに柚子の匂い夜の深さを両手で受ける 色彩が…

祈るかわりに(折句集め)

芸術家たち 捧げよう暗い星さえあたためる積み木細工の静かな歌を 千年の流刑に処され芸術は襤褸の服着た不穏な獣 気が付けばくりかえし逢うちはやぶる神さま(そんなんじゃないだろう?) あああれは彗星だけど(見てなさい)凛として咲く王国の花 まっすぐ…

空は澄んでいた(うたつかい31号)

手を繋ぐことが唯一の抵抗と言われてしまいほどけずにいる 傘いっぽんで人を殺していく映画このひとさし指は人を消せるよ 見せ消ちのサイレン高く高く鳴り空の硬度は増してゆくのだ たなごころ空に広げる受容とはつまり欲望だろう、あなたの 行政を侍女と呼…

オーケストラ短歌ネプリ

オーケストラ短歌ネプリの寄稿作品です。 オーケストラの交響曲(ドヴォルザークの七番)の特定の楽器パートを担当、楽器奏者として歌を詠む、という企画です。ありそうでなかなかない企画だったので参加してみました。 なお完成したネプリには記載されてな…

東京歌壇9月9日

こんなにも足は震えるわたくしはとっくの昔に産まれてるのに 東直子欄選でした。ありがとうございます。

東京歌壇7月29日

でも眠る。両の耳から流れ込む涼しい夜はそのままにして 東直子欄・選でした。ありがとうございます。

ねむらない樹vol.1読者投稿

はばたきよ顔を上げたら吸い込んだすべての息を吐ききりなさい 野口あや子選、佳作でした。ありがとうございます。

東京歌壇7月8日

ながいながい伝言ゲーム明け方のわたしがわたしと手を繋ぐまで 東直子欄選でした。ありがとうございます。

なんてあかるい

Twitterで「#なんて明るいさよならだろう」という付け句タグが流行っていたので。 30首連作です。

東京歌壇6月24日

海なんて知らない僕の手のひらでいま燃えあがる貝の火の色 東直子欄選でした。ありがとうございます。

その器は欠けている(みずつき7)

その器は欠けている 海へ降る雨を日永に眺めれば火は一人称を知らないままで テーブルのペットボトルの紙コップななめのままに了承される 開かれて床に散らばるとりどりの そうかおまえもhydrangea 国会質疑書き起こしメモ読む昼休み台風の目は馬の目のよう…

東京歌壇5月20日

断面に盛り上がりだす水滴のわずかに纏う刃物の匂い 東直子欄特選でした。ありがとうございます。 東京新聞:東京歌壇 東京俳壇(TOKYO Web)

ひとつだけ(うたつかい30号)

ひとつだけ ひとつだけ、とねだった花にみえるから燃やしていない線香花火 トリ、メダカ、ロボット、サクラ、ライカ、ベルカ 名づけるほどにさみしくなった 色彩で話せるならばいまはもう菫色、の、濃淡ばかり ベランダに火薬の匂い残るころ燃えさしとして眠…