題詠2013
笑え笑えそうだ得意気に歌うんだアンパンマンのマーチひとりで
しんしんと凪いだ目が欲し岩波の「柿の種」のみ開いて秋夜
本日も視界良好ここからは飛ぶことできないでいる屋上
夢でしたわたし達みな兄弟の子犬となって駆けた荒れ野は
ビル街のネオンのせいで薄まった夜空を君は闇などと言う
きれいだね、きれいだねって言いながらいつかの傷を風に放った
越境は許されなくてタンポポは投げ棄てるもの すべて、光へ
磔刑にされた絵皿は照らされて金の縁のみ静かに光る
それ以上何も言うなよ先の分かる歌詞だけずっと繰り返そうぜ?
氏神の記憶はすでに遠くなりわたしは庭の木々ばかり見る
笑い声響けば君は目を伏せる死期を悟った獣のように
何千の言葉費やされたのだろう埋め尽くされて空が見えない
永遠を示す八の字重ねつつ約束みんな守れなかった
秀逸な比喩の話を知らぬままダリヤは全て黒く染まった
衰える人を見ていたにんげんは夕焼けみたいに死にはしない
善いものになりたいのですくしゃくしゃとまだ花になるまえの花らは
ミッフィーのような顔して君はいつも駄目だのバツを怖がっている
商いを終えたからだをゆっくりと子どものように丸め おやすみ
受け入れるしかないものだ眠るとき目蓋の裏を泳ぐ白魚
(半径85センチがこの手の届く距離 今から振り回しますので離れていてください) 耳塞ぐ姿勢で「ダブルラリアット」ばかり聞いてたプラットフォーム 参考:ダブルラリアット www.youtube.com/watch?v=hC8KrIY8qT4
一般市民の声を聞けてふその声の背後でテレビわらわら笑ふ
お互いの背中を探し回るような人混みですね また会いましょう
括り髪ほつれて落ちる一筋もわずかに光り過ぎてゆく夏
がっこんと滝の速さで落ちるのでしゃがんで掬うアルプスの水
夕映えに揺れる手のひら繋がれてのぼりだしたら訪れる夜
眩しいと思った夏の影は長い人と人との谷間も暮れる
息をまた大きく吐いて喋るたび君は泡、泡、泡の向こうへ
我が愛すものの一部と思へども見たことはなし日本てふ国
慣性の法則によりいつまでもわたしは君に傷付かないの
(おれ以外だれも傷つくなよ)若い緑は光る、きらきら光る