つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

リップ・ヴァン・ウィンクル(角笛3)

リップ・ヴァン・ウィンクル もう二度と会わない知らないひとだから心置きなく手を振っていた それぞれの記憶の海の色合いをことばの中で混ぜ合わせては ポケットをひっくりかえすたぶんもう切符はとうに配られていた 習い覚えた異国の言葉になじめずになじ…

ワンダフルライフ(冬の星からこぼれる・再録)

ワンダフルライフ ストーブのまるい薬缶に手をかざすやがて頬まで結露が降りる 思い出はみな嘘だから幸福だ。薔薇のカップへ紅茶を注ぐ 真夜中の林檎の赤が透けてゆくわたしたち火をちゃんと使った でもあれは紙なんだってと月を指しきれいだねってそれでも…

創世記から(CDTNK短歌再録)

それぞれに神話を語り火を灯す OK,Google、創世記から ルンバにも進化はあって水掻きの名残のような地雷の記憶 あなたにはあなたの心拍数がありあなたの時間がある 手を握る

東京歌壇1月14日

夕立のあとの地面のにおいだよ裸足のようにあかるい空だ 東直子選でした。ありがとうございます。

今年作ったもの(2017)

2017年の活動記録です。 小説 花を贈る その他、超短編の公募企画にひとつ応募してました。 短歌 NHK短歌「ジセダイタンカ欄」「Border」(7首連作) Vuelta(アニポエvol.5 スポーツアニメ特集) 大夕焼・幻の棹(文フリポスカラリー・二次創作短歌連作) …

年越しバトン2017

「痛覚」でやっている年越しバトン。毎年参加させて頂いております。昨年に引き続き、今年も少し早めに書いてしまおうと思います。 ・2017年のこの一冊! という本を教えて下さい。(2017年発行でなくとも構いません。コミック可) 「屋根裏の仏さま」(ジュ…

あしたのタンポポ(文フリフリーペーパー再録4・コピペ短歌)

あしたのタンポポ かみさま くるはずのないあなたにはタンポポ光るきんのかんむり 三日月に指切りをして迷わない目が覚めたならぼくら大人だ ひとりなら得意なはずとふるえぬよう見渡す限りの思い出をくれ くい込んだ右手のシワの描いた絵の 今夜のことは忘…

太陽だった(文フリフリーペーパー再録3・コピペ短歌)

太陽だった 約束を どんな言葉を並べても今は雨さえ眩いばかり 忘れたくないから世界を讃えるよことば言葉 君が足りない 雨の狭間 両手で抱えきれなくて愛しかったことだけが真実 薄化粧した淋しさを抱きしめる山ほどの花どうもありがとう 愛なんてきっと神…

ごどーはいないね(文フリフリーペーパー再録2・コピペ短歌)

ごどーはいないね 待つばかりだけど開幕当面は透明なのは当然だから 全力でいっても所詮迷うから最小限でまわるプロペラ 背には花 絶頂はいまだけのものそいつは良いとお前は言って おれもお前も総集編とかないからさ素通りされてわらうしかない でもいつか…

運ぶ 揺らす(文フリフリーペーパー再録1・コピペ短歌)

運ぶ 揺らす 一人から恋は生まれるこんなにもみにくい夜が色づくなんて 白鳥とカラスがたぶん似てること虚構の街に風がふくこと 物心ついてからいつも泣きそうだこの世の誰にも意味なんてない 混ざるのは指だけだからいつかいつか見えなくなると君を揺らした…

東京歌壇11月26日

真夜中の林檎の赤が透けてゆくわたしたち火をちゃんと使える 高温で焼かれた記憶あたたかい赤い煉瓦の駅舎を抜ける 1首目が東直子欄特選、2首目が佐々木幸綱選でした。ありがとうございます。

グッナイ・バディ(ネプリ企画再録2)

ただいまと誰にともなくつぶやいて静かな部屋にあかりを灯す おかえりと迎えるはずが力尽き今夜も猫に先を越される 金の瞳をほそめて彼はしらんぷりきみとの今日のいたずらのこと 本日も不肖下僕の背に乗ってご満悦なる猫さまでした ちぐはぐなバディよすす…

デイジー・デイジー(ネプリ企画再録1)

あおいあおいGoogleEarthの海底が今日も綺麗で海に行きたい 港まで道案内をしましょうかそれとも空を見上げましょうか 真空の宇宙で星は歌うこと それで恋人は君にいますか 恋人がいれば今ごろ夕焼けの青くかがやく火星にいます ロケットは持ってないからで…

東京文学フリマに参加します。

タイトル通りです。今年もいろいろ出してます。 新刊 G11 BL短歌合同誌製作委員会 「ヴァーチャル・リアリティー・ボックス」 私家版歌集です。2012年から2017年までの200首強を収録しました。 装丁・誌面デザインは倉又美樹さんにお願いしました。 共有結晶…

The October People(仮装俳句 より)

花嫁にいつか捧げる草の花 薬掘るもはや死からは遠けれど 本物は白、囮には赤い薔薇 ともだちもぼくも映らず水澄めり 遠目には渡り鳥にも見えるだろう 凶作やドラッグストアの増血剤

東京歌壇10月29日

学習性無力感のごとき雨はふり雨音のなか私は眠る 東直子欄・選でした。ありがとうございます。

ワンルーム・サイレンス(back 2 back)

於東京駅弘済会 昭和二十二年三月二十八日 春雨の中に購ふ。 句集「春」買ふて濡れゆく家路かな / 柳白塘 (現代俳句叢書1 句集「春」(日野草城)末尾の書込み) ※ うつくしい冬への扉あけはなつ話すことなどなんにもなくて 訪うや把手冷たきワンルーム 夕…

現代詩手帖と刀剣短歌について

現代詩手帖10月号の誌上アンソロジー連載企画「川口晴美と、詩と遊ぶ」掲載・石原ユキオさんの俳句連作「四代目中村地球三郎第一句集『宙乗(スペース フライト)』より」の俳句詞書として拙訳による短歌「ほろぐらむ夢のあなたを手にかけてしんと明るむ愛と…

東京歌壇10月22日

沈黙の重さ言葉の重さとを果実のように割れなくて手は 佐佐木幸綱欄・選でした。ありがとうございます。

東京歌壇10月1日

夕焼けがはんぶん以上を占める窓ここでは雲は都心からくる 佐佐木幸綱欄・選でした。ありがとうございます。

夜の森(うたつかい2017年秋号)

木の燃える夢を見たからあなたへの言葉はみんな通じないだろう 濡れてゆくみどりよみどり石鹸が泡立つように泣く人だった わたしからわたしはずっと逃げられない夜の森 めくらめっぽう歩く ライナスの毛布みたいな朝焼けの青に静かに挽歌は降るよ 密室に射し…

花を贈る(短歌解凍掌編)

自分がにんげんでないことに気付いたのがどれほど前のことであったか、もう覚えていない。 にんげん達や獣たちにひとしく流れる時の川、そのさざ波はわたしのもとには届かない。あるいはひどくゆっくりと、海に落とした木の実のような遠さで届くらしい。同じ…

東京歌壇9月17日

かつて火が本を燃やしていたことの 真夜、風の音を確かめている 東直子欄特選でした。ありがとうございます。 東京新聞:東京歌壇 東京俳壇(TOKYO Web)

図書館ほしまつり

(当館にある星の本を集めました。) あるびれお 新潮文庫の青色に浮かぶ十字に手は重なって 夏の月まだ百歳にもなってないぼくたちだからまちがいばかり すべて星、あるいは星であったもの。(天の光はすべてみなしご) 幼年期終わらぬままに夜は降り取り残…

東京歌壇9月10日

混ざるほど色は濁るものシスレーの点描の間のうつくしい白 佐佐木幸綱欄・選でした。ありがとうございます。

東京歌壇9月3日

風船の糸は長くてどこかへとつながれている快楽 ゆれる 東直子欄・選でした。ありがとうございます。

夜の森(poecrival2)

木の燃える夢を見たからあなたへの言葉はみんな通じないだろう 濡れてゆくみどりよみどり石鹸が泡立つように泣く人だった ライナスの毛布みたいな朝焼けの沈黙 挽歌を信じそうだよ 指の爪ひとつひとつが鳥であり飛べと命じて色づけている 開けたってからっぽ…

東京歌壇8月20日

中空の月など見てる顔をしてカーブミラーのわたしが曲がる 東直子欄・選でした。ありがとうございます。

season words(CDTNK夏フェス2017)

わたくしがわたくしを殴る縁日の琉金 尾っぽのあざやかなこと 髪洗ふおふぇりや達にことば、ことば 湯上がりのような顔して改札を並んで抜けて明日の約束 真夜中のしづかな踊りぼくの影 ハンドソープ押しだすように陽はあふれ死者と生者の影淡くなる 突き出…

東京歌壇8月6日

行政を侍女と呼ぶときおそらくは男であろう政治と思う 佐佐木幸綱欄・選でした。ありがとうございます。