つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

はじめてのおつかい・短歌の本を買ってみよう?(サルベージ・1)

昔書いたけどお蔵入りした文章をサルベージ(一部加筆修正あり)してみました。短歌の本を独断と偏見込みで紹介する文章です。

もとは短歌を詠みだして3年目の頃に書いたものですが、「短歌ってよく分からないね」というのは今も変わらないなとつくづく思います。

なお、テンションが変だったりいきなり妙なことを言いだしたりしますが仕様です。連載4回分です。 

 

 

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はじめてのおつかい・はじめに

 

 細かいことは言わなくていい、攻め口を教えてくれ。 (「刀剣乱舞」歌仙兼定の台詞より)

  

 

Twitterの短歌や短歌を詠む人たちについて、わたしが最初に認識したのはとある雪の日のことでした。「雪短歌」とタグのつけられた短歌のTweetがリツイートで回ってきたのでタグをクリックしてみると雪を詠んだ短歌がずらりと並んでいたのです。

どうやら雪を詠んだ古今東西の短歌をいろんな人がタグ付きでtweetしているらしい。しかもtweetしている人達の多くはプロフィールを見ると短歌を詠む人であるらしい。

すごいなあ、21世紀のインターネットにこんな雅な空間が存在してるんだ。しかもこの短歌tweetしてる人たちみんな自分でも短歌を詠むんだ。

すごいなあ、器用な人たちだなあ。

そう感動してからおよそ1年後のある日、目が覚めたら短歌が詠めるようになっていてそのまま今に至ります。

 

国語の授業でも短歌は習ったしそれなりに好きだったけれどTwitterに流れてきた短歌(BL短歌や二次創作短歌含む)が切っ掛けで短歌が改めて気になるようになった、わたしのような人は結構いる気がします。たった31文字の短歌は作品全文がネットに掲載可能、関連botもたくさんあります。教科書には載っていたものとは雰囲気がずいぶん違う、時に自分が普段の言葉遣いと同じ言葉を使っている、一瞬でこちらの目を奪うような短歌に出会った……そんな「再会」が実現できるのが短詩の強みだなと思います。

短歌とは57577の定型詩です。57577に言葉を当てはめていくこと、それ自体は専門的な勉強をしなくてもできますから、それさえ知っていれば誰でも短歌を詠み始められる、といえます(言葉が57577になかなかうまく収まらない、という人も結構いるのは知っていますしわたしもそうでしたが、それはそれとして)。……が、その内に、さてもっと上手くなるにはどうしようかと考えだす。少なくとも私はそうでした。57577に言葉が上手く嵌った気がするものをTwitterでpostしたり他の人の短歌を見ながら、なんかもうちょっとどうにかできるのではないか、そろそろなにか本とか読んだ方がいいのかなあと本屋さんの詩歌コーナーに行っては結局何も買わずに帰ってくる、そんな時期が結構長く(たぶん1年近く)あったのでした。

入門書、と書いてある背表紙を思い切って棚から抜き取りぱらぱら捲ってみる。だけど万葉集古今和歌集などの古典を読みましょうとか、日々の小さな感動を短歌に詠みましょうとか、何だか全然ぴんと来ない。別の本を取り出してみたらサブタイトルに「定年後に始める短歌」と書いてあるのに気付いてそっと棚に戻したり。歌集や短歌を紹介する本を眺めてみても、それが本当に自分の読みたい歌が収録されている本なのか確証が持てなくて、手に取るのをためらってしまう。

もしかして、わたしが読みたい短歌の本は何処にもないのだろうか。

短歌の本なんて読まなくてもいいかな、と思ったこともあります。短歌が57577なのはもう知ってるし、Twitterを見ているだけでも素敵な短歌は沢山流れてくる。でも、でもなあ。

 

なんだろう、短歌ってやっぱりよく分からないなあ。

そう、ずっと思っている気がします。今もです。

 

2016年現在、短歌を始めてわたしは5年目になります。

とはいえこの5年間、べつに短歌一筋に生きてきたわけでもないので、自分の短歌レベルがどの程度のものか、正直わたしにはよく分かりません。ほかの短歌歴5年の人がRPGで言えばすでにダンジョンのひとつやふたつくらい攻略しているのに、自分はといえばいまだにひのきの棒を持ったまま最初のフィールドをうろうろし続けているのではないか、そんな気もします。

結局のところ買ってみなきゃわからないよね、といろんな短歌の本を買ってみることにしたわたしですが、それで歌が上手くなったのかも、そんなわけで自分ではよく分かりません。でもなにしろ始めてたった5年なので(一応小説の方は10年選手なのでそれに比べたら半分もいってない)、まだ短歌の本をあまり買ってない頃の自分の、おかしいなあわからないなあ、とうろうろしていた頃の記憶や、読んで気に入った本についてなら、独断と偏見を交えつつも多少は書けるんじゃないかなと思っています。

 

まあとりあえずこの一冊くらいなら面白そうだし買ってもいいかな。

とりあえずまだ買わなくてもいいや。

 

本なんか読まなくたって短歌は詠めるし読めるし十分楽しめる、と思います。

なので最終的な結論は各自ご自由に、ですが、短歌や短歌の本について、でもなー、どうしようかなーと考えている、かつてのわたしみたいな方の参考に少しでもなれば幸いです。

 

最後に、この連載で紹介する本の目安をあげておきます。 

・価格が1500円程度に収まること。

・書店やAmazonで購入可能であること。

・通勤・通学中に読みやすいサイズであること。

・読んで面白いこと(わたしが)。

なお、ここでは和歌(明治以前の、百人一首古今和歌集万葉集など)についての本は含めていません。ご容赦ください。

 

言うまでもないことですが、わたしもこの世に存在する短歌に関する本をすべて買って読んだわけではありません。だからここに書くのは自分の気に入った本の紹介、だけではなく、大げさに言えば本を選ぶための指針、になればいいなと思います。

構成としてはその2(この次の記事)で入門書系について、その3でアンソロジー等について書いています。その4はおまけです。

 

とりあえず結論だけ先に言えば「推しを語るように短歌について話そう」です。

推しっていうのは推しキャラとか推しCPとか、沼とか嫁とか言われるあれです。よろしくお願いします。