「それはまた別の話」と締めらるる寓話のごとく会話は途切れ
陽を浴びし乳白釉の幹のいろ風吹けばふとほの明るみぬ
池水が翡翠のごとく凪ぐ真昼ときに人語は檻のごとしも
忘れてはまだをらぬゆゑいつまでもすつとぼけたる会話が続く
たまさかのふたり過ごせる春の日をモラトリアムといつか呼ぶべし
床柱にもたれてをればこめかみに響きくるあれは幻の棹
一幅の掛軸なれば音もなく巻かれて消ゆる一生にあらむ
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泣く程のあをぞらは無し地上とはなべて遺物ぞ 花投げ入れよ
泉の下にも都はありてほそき棹水面に差せばうちそよめかむ
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5/7の文学フリマ東京で実施した「#二次創作短詩ポストカードラリー」で配布したカードの1枚目の連作でした。
梨木香歩「家守奇譚」をイメージした連作でした。