つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

こともなし(うたつかい33号)

わたくしを地上へ落とす風が吹くこの世はこともなし こともなし


どの窓も古い映画のようになる列車は橋を渡り続ける


抑えられ少しふるえた掌はちいさな昼の蝙蝠の羽根


おろかものばかりではない僕たちだ青を仰げばどこまでも青


夜。(海を漂うラッコたちのためバスタオルより厚い昆布を)


翻す手のひら 、カード、階段を踏み外しそうな夕焼けを見た

 


死者の名のひとつひとつに初夏の風あてるため正座するひと

 

(テーマ詠・カレンダー)

テーマ詠は東京歌壇掲載作でした。