つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

リップ・ヴァン・ウィンクル(角笛3)

リップ・ヴァン・ウィンクル

 

もう二度と会わない知らないひとだから心置きなく手を振っていた

それぞれの記憶の海の色合いをことばの中で混ぜ合わせては

ポケットをひっくりかえすたぶんもう切符はとうに配られていた

習い覚えた異国の言葉になじめずになじめぬことも伝えられずに

遠くから見ればあなたも直線で空へ向かって命を燃やす

いらないと言葉にはせずトランクを扉のそばにあらかじめ置く

呼気の音が潮騒のよう すれ違う舟のすべてに見覚えがある

 

 

 

どうでもいー、と牙ひからせて後はただしんしんとした冬凪の空

 

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ワンダフルライフ(冬の星からこぼれる・再録)

ワンダフルライフ

 

ストーブのまるい薬缶に手をかざすやがて頬まで結露が降りる

 

思い出はみな嘘だから幸福だ。薔薇のカップへ紅茶を注ぐ

 

真夜中の林檎の赤が透けてゆくわたしたち火をちゃんと使った

 

でもあれは紙なんだってと月を指しきれいだねってそれでも言うよ

 

屑篭に積もるティッシュが花のよう朝は春より遠い気がする

 

 

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創世記から(CDTNK短歌再録)


それぞれに神話を語り火を灯す OK,Google、創世記から

 

ルンバにも進化はあって水掻きの名残のような地雷の記憶

 

あなたにはあなたの心拍数がありあなたの時間がある 手を握る

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