リップ・ヴァン・ウィンクル
もう二度と会わない知らないひとだから心置きなく手を振っていた
それぞれの記憶の海の色合いをことばの中で混ぜ合わせては
ポケットをひっくりかえすたぶんもう切符はとうに配られていた
習い覚えた異国の言葉になじめずになじめぬことも伝えられずに
遠くから見ればあなたも直線で空へ向かって命を燃やす
いらないと言葉にはせずトランクを扉のそばにあらかじめ置く
呼気の音が潮騒のよう すれ違う舟のすべてに見覚えがある
*
どうでもいー、と牙ひからせて後はただしんしんとした冬凪の空
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