つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

砂漠の雪(角笛4)

砂漠の雪 いえそれはあなたの美しい砂漠だって余白は言葉ではない 歳時記はついに晩冬へと至り特急列車を見送るホーム 二―メラ―の警告をみな口にする泡立ちながらジャムは煮詰まる 輪郭が滲んでしまう青空は目を傷ませる光の反射 ジェイコブズ・ラダー 地上…

豊かな果実(色短歌ネプリ Tanka × Color)

豊かな果実 もうはけた芝居のために音もなく銀杏の黄色まだ降っている きらきらは満身創痍の言い換えでキレートレモンは硝子の小瓶 豊穣、と指し示される町中の鳥も食べない果樹の果実 スープ屋のクリームシチューに柚子の匂い夜の深さを両手で受ける 色彩が…

美とエゴとの往復運動の間に――鷺沢朱理『ラプソディーとセレナーデ』感想

「さやうでございまする。私は総じて、見たものでなければ描けませぬ。よし描けても、得心が参りませぬ。それでは描けぬも同じ事でございませぬか。」 芥川龍之介『地獄変』 より この文章の概要: 鷺沢朱理の歌集『ラプソディーとセレナーデ』は古今東西の…

祈るかわりに(折句集め)

芸術家たち 捧げよう暗い星さえあたためる積み木細工の静かな歌を 千年の流刑に処され芸術は襤褸の服着た不穏な獣 気が付けばくりかえし逢うちはやぶる神さま(そんなんじゃないだろう?) あああれは彗星だけど(見てなさい)凛として咲く王国の花 まっすぐ…