つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

2019-01-01から1年間の記事一覧

年越しバトン2019

「痛覚」でやっている年越しバトン。毎年参加させて頂いております。昨年に引き続き、今年も少し早めに書いてしまおうと思います。

花図鑑(うたつかい32号)

花図鑑 わたし、も。もうそれ以上なにひとつ話したくない陽だまりでした あたたかな雨ふるようなその雨を身体ぜんぶで受け取るような 沈黙を分類すれば色刷りの花の図鑑は閉じられぬまま なんという激しい拒絶いま海は空より深い青色である 錆び付いた水門だ…

お箸、二膳ください(短歌のふんどし)

コンビニ店舗は蠱毒の虫と同じだと誰か書いてた 青になったよ 捨てるべき場所できちんと捨てられるため開けられる爪楊枝いっぽん お箸二膳ください。背筋は伸ばしなさい。人間を人間として見なさい。 セルフレジありますというのぼり旗も項垂れぼくらが立つ…

ねむらない樹vol.3 読者投稿欄

まなうらをもやしつづけるまぼろしの炎よおまえのせかいはきれい 野口あや子選、佳作でした。ありがとうございます。

紫陽花の国(みずつき8)

砂にまみれこの世にまみれ狂うとき一筋ごとに髪は膨らむ はつなつのなまぬるい水流れだす水とは水の体液のこと ティーポットの茶葉が膨らんでゆくのを甦るとは言わないでしょう? 濡れ髪を獣のようにまとわせて嵐は外を過ぎるものだと いえここは紫陽花の国…

東京歌壇6月9日

死者の名のひとつひとつに初夏の風あてるため正座するひと 東直子欄掲載でした。ありがとうございます。

春の夜の幻、あるいは与謝野晶子の短歌に関する個人的な妄想について

清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき / 与謝野晶子「みだれ髪」

東京歌壇3月3日

焼け野原背負ったままで息を吐くほのびかりする満月がある 東直子欄 選でした。ありがとうございます。

第三十回歌壇賞および第一回笹井宏之賞応募作について

第三十回歌壇賞応募作が候補作に、また第一回笹井宏之賞応募作が最終選考候補作になりました。歌壇賞応募作の「草の心臓」(連作30首)については30首全首が2019年歌壇2月号に、笹井宏之賞応募作の「くりかえし落日」(連作50首)については10…

ねむらない樹vol.2 読者投稿

ぐずぐずと紅茶に溶かす薔薇のジャム あなたも夕日も遠いほど良い 内山昌太選・準特選でした。ありがとうございます。

砂漠の雪(角笛4)

砂漠の雪 いえそれはあなたの美しい砂漠だって余白は言葉ではない 歳時記はついに晩冬へと至り特急列車を見送るホーム 二―メラ―の警告をみな口にする泡立ちながらジャムは煮詰まる 輪郭が滲んでしまう青空は目を傷ませる光の反射 ジェイコブズ・ラダー 地上…

豊かな果実(色短歌ネプリ Tanka × Color)

豊かな果実 もうはけた芝居のために音もなく銀杏の黄色まだ降っている きらきらは満身創痍の言い換えでキレートレモンは硝子の小瓶 豊穣、と指し示される町中の鳥も食べない果樹の果実 スープ屋のクリームシチューに柚子の匂い夜の深さを両手で受ける 色彩が…

美とエゴとの往復運動の間に――鷺沢朱理『ラプソディーとセレナーデ』感想

「さやうでございまする。私は総じて、見たものでなければ描けませぬ。よし描けても、得心が参りませぬ。それでは描けぬも同じ事でございませぬか。」 芥川龍之介『地獄変』 より この文章の概要: 鷺沢朱理の歌集『ラプソディーとセレナーデ』は古今東西の…

祈るかわりに(折句集め)

芸術家たち 捧げよう暗い星さえあたためる積み木細工の静かな歌を 千年の流刑に処され芸術は襤褸の服着た不穏な獣 気が付けばくりかえし逢うちはやぶる神さま(そんなんじゃないだろう?) あああれは彗星だけど(見てなさい)凛として咲く王国の花 まっすぐ…