もう二度と会わない知らないひとだから心置きなく手を振っていた
それぞれの記憶の海の色合いをことばの中で混ぜ合わせては
ポケットをひっくりかえすたぶんもう切符はとうに配られていた
習い覚えた異国の言葉になじめずになじめぬことも伝えられずに
遠くから見ればあなたも直線で空へ向かって命を燃やす
いらないと言葉にはせずトランクを扉のそばにあらかじめ置く
呼気の音が潮騒のよう すれ違う舟のすべてに見覚えがある
*
どうでもいー、と牙ひからせて後はただしんしんとした冬凪の空
山羊座生まれの人でつくるネットプリント「角笛3」へ昨年に引き続き参加させていただきました。連作と、指定の下の句による付句一首になります。
ちなみにリップ・ヴァン・ウィンクルとは西洋版浦島太郎で旅から帰ってきたら南北戦争が終わっていた男の話。個人的には映画のタイトル経由で知りました。
主催の知己凛さん、ありがとうございました。