つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

都をどり短歌賞

長時間露光のなかに咲きいづるだらりの帯の金糸の刺繍

 

京都造形芸術大学文芸表現学科・上終歌会主催による「都をどり短歌賞」の題二つ「都をどり」「春」のうち、「都をどり」で大賞でした。ありがとうございました。

受賞作品は「都をどり」開催期間中のウェルカムアートとして京都芸術劇場までの回廊に展示されるそうです。もともと「都をどり」は祇園新地甲部歌舞練場で行われていたのですが、現在こちらが耐震工事中のため、2017年から京都造形芸術大学内劇場である京都芸術劇場春秋座で開催されているとのこと。今回の短歌賞もその縁あってということなのだと思います。

永田淳さん選評の ”「都をどり」の方が題をこなしにくく、都をどりを正面から詠った歌がほとんど見受けられなかった。” というのはまさしくそのとおりで痛いところを突かれたな、という感じでした。歴史的には地域を挙げての大イベントの名称でもありますがその名の通り「踊り」としても捉えられる、また宣伝ポスター等では舞台に立った舞妓さんや芸妓さんの姿が前面に出る……となると、まず「都をどり」を「何」として捉えるかで分かれそうだし難しいなと思っていたのですがその通りだったようです。

その意味では次席の歌が都をどりの有名な掛け声「よーいやさー」をそのまま名詞扱いすることで昔からの馴染みの存在・イベントとしての「都をどり」を詠まれていて面白かったです。もしかして関西、京都に縁の深い方なのかな、と勝手に想像していました。

 

受賞作全てを掲載した賞のサイトはこちら。また、大学のwebマガジン「瓜生通信」の記事はこちら

 

2018/0407追記:ウェルカムアートについて、京都造形芸術大学twitterアカウントで写真をtweetされていました。こんな感じのようです

リップ・ヴァン・ウィンクル(角笛3)

リップ・ヴァン・ウィンクル

 

もう二度と会わない知らないひとだから心置きなく手を振っていた

それぞれの記憶の海の色合いをことばの中で混ぜ合わせては

ポケットをひっくりかえすたぶんもう切符はとうに配られていた

習い覚えた異国の言葉になじめずになじめぬことも伝えられずに

遠くから見ればあなたも直線で空へ向かって命を燃やす

いらないと言葉にはせずトランクを扉のそばにあらかじめ置く

呼気の音が潮騒のよう すれ違う舟のすべてに見覚えがある

 

 

 

どうでもいー、と牙ひからせて後はただしんしんとした冬凪の空

 

続きを読む