題詠2013
二年目の題詠マラソンもどうにか終わりました。主催者様ありがとうございます。 一年目はとにかく完走することに意義がある(はず)いうスタンスだったので今年はもう少し進歩したスタンスでと思ったのですが、結果的には今年も完走で精一杯、でした。 オンオ…
心臓が止まる時にはささやかなこんな呪文も全部、おしまい。
部屋の明かりをひとつひとつと消しながらわたしのために唱える呪文
(濁流がもう来ています)冬鳥のそれぞれが抱くまっすぐな針
生きてきた時間が嘘でないことの証明としてまだ生きている
紅葉に染まる窓枠室内は季節を問わず暖かな日々
これはみんな例え話でぼくたちは多分さみしいって言いたい
群衆の「ん」と「し」の間に紛れつつ騙されている自覚はあった
ドアノブを何度も回し前へ行く辿り着けない夏だけがある
夜明け時窓の向こうにほの見える色彩、そして光る終局
遺されたボーカロイドの声だけが鯨を呼んで訪れる朝
そうこれはぼくの鳴らせる唯一の音ですきみへ送る音です
入口も出口もない丸い星であなたをずっと探しています
生き物は弱い場所から痛みだす手負いの獣に黒いコートを
餅花にしなる枯れ枝揺らすごときみは何度も白い息吐く
安楽椅子にぼくら座っているんだろうぼんやりとしたものに襲われ
にぎやかな夜の嘲笑光りだしなくした犬歯うずきはじめる
重心を左に寄せて人を待つまた会うなんてあるのでしょうか
ばら色に霞んだ空を見送った地上はいつかいなくなる影
遠ざかる、また遠ざかる。誰の手も柔らかな熱を持たないゆえに
前進を出来ぬ自分を退けて窓を貫く目覚めの光
冬季鬱近付いてきて明るさは修復された絵の中にある
(悪い子だ)ずぶずぶ沈む温もりの底から上を見上げています
街灯が灯るよ。きみは今ひとり腕ひらめかせ魔術師となる
うっすらと目蓋に金の粉を刷き異国の夜は瞳を開ける
納得はできないままに頷けばほろほろと赤い木の実こぼれる
いたいいたいとさすり続ける良心のかたちは誰も知らないままで
水紋は広がり消えるめでたしで終わりへ向かうワルツのように
「史料では空は青かったそうです」博物館にこだまする声
星は夜に産み落とされるべきだろうそうでなければ淋しすぎるよ