つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

サルベージ・恩賞を受け取る


こわごわと広げた手にも陽は落ちて「恩賞を受け取ってもよいか」

窓際の白い紐わずか揺れており遠い大地の動きを辿る

声がより小さい方はどちらです雨はふるふる耳はふたつだ

君はもう痛くはないさ言葉とは無理に作ってさらした傷だ

夕焼けはもう似合わぬと諦めた人に紛れて早足で行く

痛いねえ、本当にねえそう言って消費しあって生きているのよ

もう会わぬ人の痛みの裂け目にも肉芽は湧いて曇天の雪

それ以外何も変はりはしなかつた引き落とされたテーブルクロス

雪の降る予感に顔が上を向く記憶するとは負けていること