Vuelta
蓋取れば茄子の酢漬けの五日目は食べ頃としてしずもりをりぬ
コンセント挿せばちひさく散る火花ゆめの甘さは遠くなりけり
風戦ぐアンダルシアを映すときブラウン管に立つ砂嵐
消失点 破線であつた白線がいつぽんとなり漕ぐ吾がゐる
ブレーキを握らぬ身体すれすれに傾がせて聞く歓声 旋回(vuelta)
光りつつ降る雨、やがては土砂降りの雨 車輪は止まれば倒れてしまふ
汗ひとつかかぬ口調でキャスターは選手の心拍数を語りぬ
敬礼をしてやる程度には許すオズボーンの真黒き雄牛
見下ろせばむらがりてある家の灯の愛してるとか軽く言ふなよ
血を啜る顔つきのまま投げられし空のボトルの行方は知れず
アニポエvol.5「スポーツアニメ特集」の寄稿作品でした。
スポーツアニメをテーマにした短歌連作10首、ということで上記は「茄子 アンダルシアの夏」が「原作」になります。
デフォルメや省略の可能なアニメ作品において描かれたものには全て描かれる意味が、必然性があるのだと、だからそれを念頭に置いて考察なり評論なりは行わなければならないという話を昔どこかで聞いたことがあるのですが、そういう形で「世界」を「再構成」したものを「詠み手の視線が見える」などと言われる短歌で詠むのはちょっと面白いかも、と思いました。
とはいえあまりスポーツっぽくはない連作かもしれませんが。
なおVueltaとはスペイン語で一周、一回転、などの意味。
またVuelta a Españaは毎年9月、スペインで行われる自転車プロロードレースのことを指します。ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアとあわせてグランツールと呼ばれるそうです。略称「ブエルタ」。(wikipediaより)
お誘いくださったそらしといろさん、主催の杉中さん、ありがとうございました。