つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

いつか、パディントン駅で(短歌中心百合アンソロジー・きみとダンスを 寄稿作品)

2015年4月19日発行の百合詞華集「きみとダンスを」(紙媒体は頒布終了、現在は電子書籍を配信中)寄稿作品。中山明さんのオンライン歌集ラスト・トレインの一首の解凍小説を書きました。ちなみに本では一番最後に掲載されていました。実はちょっとした仕掛けを入れたりしてるのですが、結構気づいて頂けたり、ご感想を頂けて嬉しかった記憶があります。

短歌、俳句、イラスト、小説の合計18名によるアンソロジーでした。

主催の柳川麻衣さま、有難うございました。

 

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ライナーノーツ(曲連想創作アンソロジー「THERE'S A VISION」(5/4SCC))、他(片隅での連載終了について)

5/4のSCCにてリリース(頒布)されるアンソロジー「THERE'S A VISION」に短歌連作で参加します。

アンソロジーの詳細はこちら。

www.pixiv.net

CDサイズ特寸本、12名によるアンソロジーです。表紙のイラストがとても綺麗なのと、豪華メンバーと好きな曲ばかりなので、読者としても読むのが楽しみです。

主催のあずみさんには表記の関係など大変お世話になりました、ありがとうございます。

ちなみに私は「五つの橋」で参加します。短歌の30首連作です(上記リンク先で冒頭2首が読めます。5/5追記:29首の間違いでした、すいません)。結構人気の曲だと思うので緊張しています。

ちなみに原曲歌詞も75調が多いです。

zabadak 五つの橋 - YouTube

五つの橋/ZABADAK-カラオケ・歌詞検索|JOYSOUND.com

 

印象的なギターから始まる五つの橋ですが、物語仕立ての歌詞も相まって情景が鮮やかに浮かぶ……ようで、実は結構不思議な歌詞だなと結構前から思っていました。

まず、楽器が何かわからない。

私の個人的な感覚では歌詞二番に出てくる「チャルダッシュ(チャールダーシュ)」はヴァイオリン演奏で有名なモンティの曲があるので(運動会とかでよく使われてます。ただし調べたところ、もとはマンドリン用に作曲された模様)ヴァイオリンのような気がしてしまうのですが、一方で冒頭イントロのギターの印象も相まってか、一番の中で歌われている楽器は吟遊詩人の持つリュート系のイメージもあったりします。

原稿提出後、この歌に出てくる「古い楽器」がどんな楽器だと思うか、twitterでアンケートも取ってみたのですが、ヴァイオリン系、リュートマンドリン系、ハープ系と結構票がばらけて面白かったです。実際、そう思って歌詞を読むと楽器が特定できるような情報は余りありません。この世界には存在しない楽器、という可能性だってあるわけです。

次に(これが現実世界の話だとしたら)時代がよく分からない。

チャルダッシュ(チャールダーシュ)」はハンガリー系の民族音楽がもとではありますが、実際には19世紀、すなわち民族自決主義の時代(国民楽派の時代でもある)に生まれ・流行したものです。ではここで歌われているのは全部19世紀の話なのか、というと、しかしちょっと迷ってしまうところがあります。「国境の草原」とか「見張りの塔」とかのあたりはやっぱりもうちょっと昔、中世、吟遊詩人の時代を想定しているのではないかなと。

更に言えば「旅の男」はどこを旅しているのか。地形やルートにもよりますが五つ橋を渡るって結構移動距離長くないか、とも思ったり。

いやいやそんなこと気にするのはお前くらいだ、そこはふんわりファンタジー世界を楽しんでおけよと自己ツッコミはいれつつ、でもだとしたら三人称の遠く綺麗な回想でなく、「旅の男」と今は店の中で眠る「古い楽器」はかつてどんな景色をリアルタイムで見ていたんだろう、というひとつの可能性として連作を作りました。

ジプシー、吟遊詩人、流浪の民、旅芸人といったモチーフには幼い頃から憧憬がありますが、ではたとえば旅を続ける「旅の男」にとって「見張りの塔」とはどんなものだったのだろうか、とか。

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

 

なお、SCC後はデザフェス、夏コミなどで頒布予定のようです。通販は無いとのこと。詳細は上記リンクをご確認ください。

 

 

さて、話は変わって。

web文芸誌「片隅」での1年間の連載が終了しました。短歌とエッセイを掲載していただいてました。

 

m.kaji-ka.jp

「片隅」(を運営している伽鹿舎)はこれから紙媒体の出版業がメインになっていくようです。つい先日、雑誌「片隅02」が刊行されました。

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先日の地震のこともあり、いろいろと慌ただしい中雑誌が刊行されたことは奇跡的なことですが、一方で関係者の方にとっては大変なことだろうと思っています。

文学も、地震のことも長期戦のことなので、関係者の方におかれては難しいけれどもどうか無理をしすぎず進んでいけますように、と思います。

こちらも、またご縁を頂けるよう頑張りたいなと思っています。

年越しバトン'15

「痛覚」でやっている年越しバトン。例年参加させて頂いております。
昨年に引き続き、今年も少し早めに書いてしまおうと思います。

 


・2015年のこの一冊! という本を教えて下さい。(2015年発行でなくとも構いません。コミック可)

  美術手帖 2015年9月号(特集 絵描きと戦争)

    美術手帖 2015年 09月号 | 本 | Amazon.co.jp

 

社会や身の回りで何か大きなことが起きたとき、これは私を助ける手立てになるはずだと直感的に確信してひっつかむ本というのが時折あって、例えば2年前にはそんな理由で「イェルサレムのアイヒマン」を手に取っているのですが、今年はこれだったな、と思います。
表紙イラストを描いている今日マチ子椹木野衣の対談から始まり、菊畑茂久馬のインタビュー、東京国立近代美術館戦争画展の解説、戦争画家達の対談再録など、非常に充実した内容でした。雑誌の特集としてもこの号は長く語り継がれるのではないでしょうか。

 
次点で上げたかったのは「紙の動物園」(ケン・リュウ)「月に吠えらんねえ 3巻」(清家雪子)「モーブ色のあめふる」(佐藤弓生)でした。
SF読まなきゃとずっと思ってたんですが読書メーターの記録を見たら小説はSFしか読んでない、というかそもそも小説あまり読んでませんでした……。

ちなみに昨年は「はじまりのはる」 (瑞野洋子)。
なんというかここ数年、いわゆる「荒唐無稽なフィクション」を上げていない気がします。
(SFを読まなきゃと思っていたのも根っこは同じような)

 

・2015年のこの一曲! という曲を教えて下さい。(2015年リリースでなくとも構いません)

星野源地獄でなぜ悪い

www.youtube.com


嘘で出来た世界が 目の前を染めて広がる
ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ
作り物だ世界は 目の前を染めて広がる
動けない場所から君を 同じ地獄で待つ
同じ地獄で待つ

 

某カラオケで知った歌なんですが、いい歌詞だなーと思いつつ、未だにCD買えてません。


昨年は「WOODEN DOLL」(米津玄師)。

 

・2015年一番注目していた人を教えて下さい。

(名前) 特になし。

 

・2015年の重大ニュースを3つ選んでください。

1安全保障関連法案可決
ソーシャルゲーム刀剣乱舞関係がなんかもうまじで色々ありすぎた
3web文芸誌「片隅」での短歌・エッセイの連載


ちょうど昨日ニュースになったの慰安婦問題について、韓国との協議合意についても上げるべきなのでしょうが、これの余波は来年以降に来そうな気もしています。私事では親族の結婚なんかもあったなあと。
連載については良い経験をさせて頂いてるなあと思います。ありがたいことです。
(といいつつ、今月中の原稿がまだだったりしますが)


 

・2015年の流行語を勝手に選んでみてください

ポリティカル・コレクトネス

 

歴史修正主義」「加担」とも悩みましたが、こちらで。
 

・2015年を漢字一文字で表してみてください


「斬」

絶と悩みました。
ちなみに去年は「空」一昨年は「圧」としていました。
 

・あなたが2015年一番嬉しかったことは何ですか?

 ネットプリント企画を不詳主催したのですが、いろんな方とやり取りで来て楽しかったです。
 我ながらなかなか良いものが作れたなあと思います。うむ。

 
・あなたが2015年一番悲しかったことは何ですか?

 自分の創作を信じられなくなったこと。これは今も継続中です。
 理性的な対話が大事だと言いながらそれを実践できてはいないなあと改めて痛感したこと。
 悲しい、に分類されるのか分かりませんが異動したら前任者が各種地雷を積み上げたままにしていたこと。


・あなたが2015年ハマったもの(こと)を教えてください。 

 着物。

 実際には浴衣はそれなりに着れるようになったものの着物はまだまだ、なのですが。
 あと胡粉ネイル。マニキュアって綺麗に濡れないのと落とすのが面倒で苦手だったんですが、これは楽なので良いです。
 あ、刀剣短歌も入るでしょうか。勉強もかねてたのと各種イベントタグに乗っかってたのもあって相当書いてます。100首はゆうに越えてる筈。

 
・あなたにとって2015年はどんな年でしたか?

 空回りしてたな、と去年書いてたんですが今年も空回りしていたような。
 後から見たとき色々布石の年になってたらいいな、と思います。
 とりあえず異動願いを出しました。

 あと、美術展や舞台をよく観に行った年だったと思います。京都の琳派展、東京ステーションギャラリーの陶器の展示は良かったです。

 
・2015年にやり残してしまったなあということはありますか?

 本を読んでないなあと。
 原稿と年賀状が終わってないのは去年と同じです。
 異動のせいもあって被災地ボランティアにいけなかった。。。
 

・2016年の目標を教えてください。

 人と会う。交流する。なんか占い師さんにそういう年だと言われたので。
 今年は去年に比べて歌会とかあまり行けなかったのですが、オフラインで色々会う機会を増やせたらなと思います。まずは新年歌会から。
 

・2016年のヒットアイテムを予想してください!(グッズ、流行語、タレント、ファッション等)

 和物と神社ブームは続きそうですね。
 古事記関係は既に本が出てますが、もう少し何か出てくるんじゃないかと思っています。

今年作ったもの(2015)

まだもう少し猶予がありますが、取り急ぎ。

2015年の活動記録です。

  

小説

超短編1本(短歌の超短編

 

短歌

web文芸誌「片隅」コラボ連載「仮想記憶」(毎月掲載、5首連作×12カ月)

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百をめぐる短歌(候補作)

うたらば・ブログパーツ短歌×2、うたらばvol.13

うたつかい 春号、夏号 、秋号(5首連作)

(二次創作短歌)

刀剣伝授(ネットプリントアンソロ企画主催+5首連作)

今夜わたしの部屋に来なさい(付句30首連作)

桜下絵歌巻玉鋼(20首連作・epub

 

評論・散文

たとえば、「アイ」について [つきのこども/あぶく。] より | BL短歌 共有結晶BL短歌 共有結晶

(当blog→共有結晶サイトに転載)

遠い水、神義論と対峙する「私」ーー服部真里子『行け広野へと』について - つきのこども/あぶく。

web文芸誌「片隅」エッセイ連載「鏡の箱に手を入れる」(隔月掲載)

m.kaji-ka.jp

 

二次創作短歌はどう整理しようか去年も迷ったところで、今年は紙媒体が少ないのでさらに迷ったのですが、作品のクオリティを意識したと言っていいのはこのあたりかな、というところで3点あげました。半分以上は短歌というよりは企画としてのカウントです。(とはいえepubはかなり突貫工事だった感が……)

小説が少なめと去年も書いていたのですが今年は更に減って頭を抱えています。その一方でエッセイや評論は書いているので実は散文としてはそれなりの量を書いていたのか、と自分でもちょっとびっくりしました。あと短歌も思ってたより書いてたんだな、と。webの活動だけだとどうも実感が持てないですね……。

題詠blogを完走できなかったのが我ながら歯がゆいです。

なお、投稿作の落選したものは含んでいません。

 

来年は小説を書きたいです。あと動画と音声編集。短歌はもうちょっと方向性を固めたいんですが基盤をどうするかが目の前の課題です。

 

以下は去年のメモから。

読み返しながらこれは今も同じだなと思いつつ、「共有」の難しさは今年はよりシリアスに感じていた気がします。

++++

読書記録を読み返していて気づきましたが、恐らく今年の前半(というより多分2013年から)、私の興味関心は物語を物語る、「かたる」ことについてでした。

私は河合隼雄などの言うところの「物語の力」というのをとても信じているのですが、ここ数年で思ったのは、個人が個人自身を救うために産んだその人の、大げさに言えば人生についての「物語」が、他者にも共有可能な形で提供されることは実は想像以上にまれなことであり、むしろそのままでは共有を阻害する場合も結構多いのではないかということでした(という説明で十分なのかわかりませんが)。

それは阻害するような物語を産んだ個人が悪いという話ではない。世の中の人すべてが創作者ではなく物語ることについて意識的であるとは限らず、加えて人間が常に意味を求め、御伽噺にすら教訓を求める性質を持っているならば、それは不可避の傾向と言えます。

今年読んだ、ジョナサン・サフラン・フォアやリチャード・パワーズは私にとってそうしたことに意識的に見える人達、でした。いとうせいこうメタフィクション、パラフィクションも私の中でそうしたテーマで繋がっています。すなわち共有は、どのように語ればなされるのかということ。

私はそれを小説・短歌共通のテーマとして考えていたのですが、このテーマはある意味では「物語」の否定でもあり、一方で短歌はそもそも「物語」についての感覚がどうやら私と異なる方が多いようで(主語が大きいですがそこはご容赦ください)、ひとり勝手に疲弊していたのが多分今年の後半でした。

ちなみに上述の共有について、答は今でも出ていません。そもそも「物語」を否定するというのが傲慢なのかもしれない。

ただこの2年ほど、そのあたりについては結構考えたこと、はここにメモしておきます。

とあるキャプション (短歌の超短編)

 さて、次にご覧頂くのはこちら、初代館長の記憶です。ロビー中央に立つ等身大ホログラフはご覧になられましたか? 髭を長く生やした、ええあれがそうです。
 死者の記憶の保存技術を開発した初代館長Tは、自らにはその技術を用いず遺体を完全焼却するよう、ストリーミング3時間分の遺書を遺しました。が、当時彼の部下であった私の上司はこれに従うことをしませんでした。理由ですか? いえ、聞いたことはありませんね。ともあれ、上司の奮闘にもかかわらず、初代館長から抽出できた記憶は結局この鍵一つだけでした。鍵に合う錠前とその中身については現在も調査中です。
 噂は、幾つもあります。自らの記憶を誰にも見せぬよう、新技術を開発した彼はこの鍵に合う錠前の掛かった箱の中にそれを閉じ込めたのだという者。愛する妻への言葉を閉じ込めたのだという者。世界への絶望を閉じ込めたのだという者。本当はこの世界こそが、彼の遺した記憶なのだという者。いろいろです。

 ……私ですか? 私としては、何とも。
 我々の創造主が滅びて既に百年、けれど当館に収められた彼らの記憶は私の目には全て、美しいフラクタルとして映るばかりです。近付いて、じっくりご覧ください。

 

 

  美術館館長Tが遺したる小さな鍵についての話  / 石川美南

 

***

 

小野塚力賞でした。ありがとうございました。

星新一の「鍵」という話を思い出したといわれ、調べてみてなるほど、となりました。

ちなみに。お題として出た短歌は5つあったのですが、この短歌をお題にしたお話が一番多かったそうです。

山羊の木さんの活版トークも面白かったです。

 

賞を取った方以外の作品はいずれフリーペーパーに掲載されるのだと思いますが、それ以外だと荒悠平さんの「同窓会入院」、はやみかつとしさんの「Table of contents」が個人的には好みでした。

月下桜さんのお話が複数の短歌のお話を書きつつ、それぞれ内容がリンクしているぽいのも面白かったです。