エヴァンを棄てる
泥拭い落としひとりのバレンタイン
夜の梅スニッカーズはちぎるもの
告白はしないが
銀紙のちりちりと鳴る愛の日よ
たんぽぽを頭にのせてチョコになれ
みんなうそ。猫の舌とはチョコのこと。
朧月キットカットは出せぬまま
薄氷やマーブルチョコをたどりゆく
手首にもチョコがついてて梅の花
春の夜の電子レンジにチョコレイト
バレンタインもう一度だけ化けて出ろ
てのひらで溶けるチョコだけ手に乗せて
ジャン・ポール・エヴァンを棄てし春の野辺
忘れてしまふ
しやぼんだま過呼吸の苦しさで好き
半券をぶらんこに置き帰ります
春の風邪ビニル傘より空みれば
アドリブがどうも効かずに山笑ふ
きみに降る陶片、ちがう、しゃぼん玉
春時雨クローンのやうにふたりきり
バレンタイン棘のある花だけあげる
しやぼん玉ここから先は戦争です
春寒し心臓に降る雨のこと
ソリストのやうだねきみの忘れ角
はるのそら改札鋏が鳴つてゐた
うららかな背中に向けてクラッカー
パスワード忘れてしまふ鳥の恋
「自販機で間違えてココアを買ったからお前のと替えてくんない?」とかなんとか言えばそれはもうバレンタインBLなんだよ。
缶コーヒーかすめ取られる春の夜
薄氷やざまあの意味がわからない
「そういえば」「んなんじゃねえよ」バレンタイン
如月のココアの缶が熱すぎる
自販機は黙秘貫き春の星
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