今日、きみの星がずっと前に燃えていたことを知りました。
続きを読むこともなし(うたつかい33号)
わたくしを地上へ落とす風が吹くこの世はこともなし こともなし
どの窓も古い映画のようになる列車は橋を渡り続ける
抑えられ少しふるえた掌はちいさな昼の蝙蝠の羽根
おろかものばかりではない僕たちだ青を仰げばどこまでも青
夜。(海を漂うラッコたちのためバスタオルより厚い昆布を)
翻す手のひら 、カード、階段を踏み外しそうな夕焼けを見た
死者の名のひとつひとつに初夏の風あてるため正座するひと
(テーマ詠・カレンダー)
テーマ詠は東京歌壇掲載作でした。
氷について
バルコンの手摺も冷ゆる夕暮れの森をあんまり見ては駄目だよ
まうずつと広がつてゐるのは曇天。窓は翼の形に開く
わたしさへ黙つてゐれば破れないうつくしい肖像画いちまい
パントマイム伝はらぬまま更くる夜の子守唄つてみんな寂しゑ
怒りだと気付けばさびしくなる怒り水面の波は消えていつたよ
たましひを呼び返すごとくりかへし空に向かつて鳴らす音楽
編まれたる髪は解かれそのたびに仔馬のごとく吾が背を跳ぬる
角を持つ獣たちから駆け出せばいまは百年越しの雪溶け
うつくしき馬つひに御し駆けてゆくアレンデール女王の性別は氷
飛び去つてしまつてもいい掌にまだ乗せてゐる手紙一通
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短歌連作サークル「あみもの」発行の「あみもの24号」寄稿作でした。
映画「Frozen2」に。