つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

2014-08-16から1日間の記事一覧

077:聡(円)

聡明な明るさの中わたくしの断崖は光りながら消えゆく

076:ほのか(円)

もう君はほのかな夢となつていてめざめた秋のあかとき静か

075:盆(円)

死者帰ル電線ト火ヲ辿リツツ盆には帰ル必ず帰ル

074:焼(円)

ああ焼けた匂いは知らない戦いに負けたことなど忘れてるから

073:谷(円)

通勤は不気味の谷を経由してヒトの顔してホームに降りる

072:銘(円)

ご銘はと聞かれて不意に思い出す過ぎ去っていた風の名前を

071:側(円)

こちら側ではない方にいる、いる、いる、と歯を剥き出してお前は告げた

070:しっとり(円)

しっとりと君を濡らした雨雲はもはや消えたとテレビが告げる

069:排(円)

もろこしの真白い粒を見つけ出し使用している排除の論理

068:沼(円)

両足を緋色の沼に浸すごと歩いてゆけば浴びる熱風

067:手帳(円)

新しい手帳を開く手つきにて真白いシャツのボタンを外す

066:浸(円)

すうすうとミントの味をお互いに浸透させるさびしいあそび

065:砲(円)

砲台のように太鼓は空仰ぎ抱かれながら殴られている

064:妖(円)

ぼくたちが車に轢かれたそのときも妖怪ウォッチは有効ですか

063:院(円)

をんなではないなと思ふ。病院の淡いピンクがひどく似合わぬ

062:ショー(円)

遠吠えをたなびかせ走る窓の灯は(イッツ・ショー・タイム)まだ燃えている

061:倉(円)

待つことは燃えていること水面の煉瓦倉庫の赤が歪だ

060:懲(円)

勧善懲悪なんてないこと知りながら君の掲げた青が痛い

059:畑(円)

ライ麦畑で腕を広げるように笑う君の傷など暴きたいのだ