つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

題詠2014

今年作ったもの(2014)

バトンではありませんが、メモ代わりに。 2014年の活動記録です。

100:最後(円)

最後には燃えて崩れるものばかり集めていたとかみさまの声

099:観(円)

春の午後軋み始める観覧車わたしは速度をもう落とせない

098:吉(円)

吉兆を占う人の目蓋へと落ちるダナエの金色の雨

097:陽(円)

ブラインドの配列乱れそこだけが午後の陽射しでふいに明るい

096:翻(円)

翻訳の翻訳をまた翻訳し翻訳されて誤訳ばかりだ

095:運命(円)

「運命」が始まりそうに詰まる息 クラリネットの幻聴がする

094:雇(円)

雇用者の増減示す線グラフ山がいつでもひとつだけある

093:印(円)

ワープロの活字に垂直になるよう首傾げつつ押印をする

092:勝手(円)

死んでゆく命が鮮やかだといって自分勝手なお話を書く

091:覧(円)

回覧してゆく言葉が一番強いからきみの言葉はもういりません。

090:布(円)

何枚も布を纏って会いに行く駅前の交差点を渡る

089:煽(円)

ぐっしょりと波打ちながら煽動の言葉が町へ溶け出してゆく

088:七(円)

雑踏を電気の白い灯が照らしまた薄くなる火の七日間

087:故意(円)

長々と読み上げられる人生は全て未必の故意であったと

086:魅(円)

死んだねえ、うん死んだねと公園で魑魅は語る花火の記憶(魑魅:すだま)

085:遥(円)

両腕を遥かに遠く投げるから花も小鳥も光の一部

084:皇(円)

逆位置の「皇帝」円の真ん中に置かれて錫は離さないまま

083:射(円)

スクリーンセーバーに似た窓があり午後の光が反射している

082:チェック(円)

格子模様をチェックと読んで過ぎていく家を出て行く人との会話

081:網(円)

目に見えぬ編目の中に囚われて啓示ばかりが注がれている

080:議(円)

(まるで火を焚いているよう)誰もいない議事堂へ向け怒号がのぼる

079:絶対(円)

声色に潜んだ愚痴をはかるため試されている絶対音感

078:棚(円)

反射する海の明るさ受けとめてかはたれ時の棚田をくだる

完走報告(円)

三年目の題詠マラソンも終わりました。主催者様ありがとうございました。 今年はいつもより早めに終わりました。一、二年目ともに、とにかく完走することに意義がある(はずだ、そうであってほしい)いうスタンスで今年も同様のスタンスで進めたのですが、改め…

077:聡(円)

聡明な明るさの中わたくしの断崖は光りながら消えゆく

076:ほのか(円)

もう君はほのかな夢となつていてめざめた秋のあかとき静か

075:盆(円)

死者帰ル電線ト火ヲ辿リツツ盆には帰ル必ず帰ル

074:焼(円)

ああ焼けた匂いは知らない戦いに負けたことなど忘れてるから

073:谷(円)

通勤は不気味の谷を経由してヒトの顔してホームに降りる