題詠2014
ご銘はと聞かれて不意に思い出す過ぎ去っていた風の名前を
こちら側ではない方にいる、いる、いる、と歯を剥き出してお前は告げた
しっとりと君を濡らした雨雲はもはや消えたとテレビが告げる
もろこしの真白い粒を見つけ出し使用している排除の論理
両足を緋色の沼に浸すごと歩いてゆけば浴びる熱風
新しい手帳を開く手つきにて真白いシャツのボタンを外す
すうすうとミントの味をお互いに浸透させるさびしいあそび
砲台のように太鼓は空仰ぎ抱かれながら殴られている
ぼくたちが車に轢かれたそのときも妖怪ウォッチは有効ですか
をんなではないなと思ふ。病院の淡いピンクがひどく似合わぬ
遠吠えをたなびかせ走る窓の灯は(イッツ・ショー・タイム)まだ燃えている
待つことは燃えていること水面の煉瓦倉庫の赤が歪だ
勧善懲悪なんてないこと知りながら君の掲げた青が痛い
ライ麦畑で腕を広げるように笑う君の傷など暴きたいのだ
凄惨に笑った君の横に立つここは静かで頬だけ熱い
訪れていない県名を数えるコンビニのおにぎりの具みたいに
見開きになった絵本の水彩は余白の白が一番きれい
沈黙があなたの武器であればいい芸術論はみな風にする
残照を呼べば手を振る影がありあなたの顔は忘れてしまふ
一滴も濁らないまま夕暮れの夏空すべて藍に染まった
君に傷が残るといいな笑うように戒めるように息を吐いてる
「ごたいせつ」と呼ばれて愛は咎人の束の間あたる春の陽のやう
思い出す頻度が徐々に増えていて つまりは君を忘れたのだろう
同族が欲しいと思う春の夜の岬はすべて青ざめた指
爆音よ君はそれでも行くんだろうセンターラインの白い十字へ
ぐちゃぐちゃの嫉妬も汗も拭いさり正しく箸を持っている手だ
賛成の方は挙手をと声がしてもう百年の静寂を眠る
お別れは降るものですね桑の木を手のひらばかり回り続ける
出発の時刻をとうに過ぎているプラットフォームのように明るい
(ガリバー旅行記のヤフーは絶え間無く争い、無益な輝く石を切に求めているという。)ヤフー僕らは美しくないねここにある言葉がみんな光らないんだ