題詠2014
滅び去った巨人のように尊大な言葉ばかりが広がってゆく
一生の果ての向こうの暗闇に立ってる人をもう知っている
夢の跡。君のオカリナ吹いたこと。窓の下へと手を振ったこと。
冷凍の鮭の切れ目が鍋の中取り戻しだすやわらかな赤
ぼくたちはちょっとずつずれて日を回す中華料理のお皿みたいに
宴席の声は分厚い雲となり土砂降りだなと氷を回す
バックルを留めれば足の甲に風ふわり春へと歩き始める
ふいに何かが視界を因数分解したような朝だ虹が揺れてる
理由とか考えたくないような夢見て目覚めれば光るパソコン
人のものを盗んだようです。母の字を古い連絡帳に見付ける
君の砂がこんなとこにも入ってて振って叩いて結局捨てる
栗ご飯の米に染み付いた甘さのような記憶がまだ残ってる
噴水、あれは燃えることのない流星。旅立ったなら帰りましょうね
材料の分からぬスープ嗅ぐように犬はわたしに鼻を寄せくる
銀のナイフで掬うバターが柔らかくパンを抉ったここからが春
窓からのぜんぶがしろい炎ですこめかみだけが脈打っている
応答せよ録音されず死んでいくあらゆるものの声よ(わたしよ)
信仰として君を見ていた がっかりはされたくないと思ってた
遠くまで行きたいんだよ(生きたいね)蕗の皮みなまっすぐ落ちて
ああ雨が降っているのか部屋中を保冷バッグの暗闇にして
緞帳を右手に絡げ引き裂けば関東平野にあめ、降り注ぐ
文机の書き損じなら折りたたみ飛行機にしてもう、飛んでゆけ
アスファルトの中央走る白線の少し右側ばかり歩いた
「でもわたし妹だったし、やなことは誰かがやってくれるかなって」
背後から抱きつく人の背を撫でるこれはどちらの応援だらう
我々はサービス業者捧げ持ち酒を注げば女らしき手
辺境の血はなお濃くて亡き人を探す両手に螺旋が絡む
椿油は砂礫に落ちる水のごと漆の艶の水位を上げる
(わたしだけにしか見えない祭壇に埃はつもり)止ってしまえ
国は土でしょうか赤い歯肉まで果実ざくりと染み込んでゆく