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つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

海にいるのは

人魚を待っている、とあいつは言う。 学校までの道は自転車で三十分、海沿いの真っ直ぐな道は緩やかな坂道になっている。車の殆ど通らないアスファルトの狭い道には真ん中に大きなひびが走っていて、タイヤが触れるたびにがくがく揺れる。 帰り道は下り坂、…

なりそこない(連作・握手の代わりに手を)

君は私を人間だと言う。機械ではないと言う。 私はそれは違うと思っているのだが、君は決して受け入れようとしない。 私は今日も君に会いに行く。 握手の代わりに手を 通勤に支障はないと示すためすり抜けて行く自動改札 液晶をひたすら磨く帰り道消えない影…

うたらば・ブログパーツ短歌

泣きかたも泣き終えかたもわからない私の中に水だけがある (テーマ:終)

声に出して読まれたい超短編

声優・ナレーターの栗田ひづるさんをお招きしてのイベントでした。詳細はこちら。 http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2014/06/post-4ae9.html (私は日程を勘違いしており不参加でした。大変申し訳ありません……)拙作「水車の話」はタカスギシンタロ賞の大…

100:最後(円)

最後には燃えて崩れるものばかり集めていたとかみさまの声

099:観(円)

春の午後軋み始める観覧車わたしは速度をもう落とせない

098:吉(円)

吉兆を占う人の目蓋へと落ちるダナエの金色の雨

097:陽(円)

ブラインドの配列乱れそこだけが午後の陽射しでふいに明るい

096:翻(円)

翻訳の翻訳をまた翻訳し翻訳されて誤訳ばかりだ

095:運命(円)

「運命」が始まりそうに詰まる息 クラリネットの幻聴がする

094:雇(円)

雇用者の増減示す線グラフ山がいつでもひとつだけある

093:印(円)

ワープロの活字に垂直になるよう首傾げつつ押印をする

092:勝手(円)

死んでゆく命が鮮やかだといって自分勝手なお話を書く

091:覧(円)

回覧してゆく言葉が一番強いからきみの言葉はもういりません。

090:布(円)

何枚も布を纏って会いに行く駅前の交差点を渡る

089:煽(円)

ぐっしょりと波打ちながら煽動の言葉が町へ溶け出してゆく

088:七(円)

雑踏を電気の白い灯が照らしまた薄くなる火の七日間

087:故意(円)

長々と読み上げられる人生は全て未必の故意であったと

086:魅(円)

死んだねえ、うん死んだねと公園で魑魅は語る花火の記憶(魑魅:すだま)

085:遥(円)

両腕を遥かに遠く投げるから花も小鳥も光の一部

084:皇(円)

逆位置の「皇帝」円の真ん中に置かれて錫は離さないまま

083:射(円)

スクリーンセーバーに似た窓があり午後の光が反射している

082:チェック(円)

格子模様をチェックと読んで過ぎていく家を出て行く人との会話

081:網(円)

目に見えぬ編目の中に囚われて啓示ばかりが注がれている

080:議(円)

(まるで火を焚いているよう)誰もいない議事堂へ向け怒号がのぼる

079:絶対(円)

声色に潜んだ愚痴をはかるため試されている絶対音感

078:棚(円)

反射する海の明るさ受けとめてかはたれ時の棚田をくだる

完走報告(円)

三年目の題詠マラソンも終わりました。主催者様ありがとうございました。 今年はいつもより早めに終わりました。一、二年目ともに、とにかく完走することに意義がある(はずだ、そうであってほしい)いうスタンスで今年も同様のスタンスで進めたのですが、改め…

077:聡(円)

聡明な明るさの中わたくしの断崖は光りながら消えゆく

076:ほのか(円)

もう君はほのかな夢となつていてめざめた秋のあかとき静か

075:盆(円)

死者帰ル電線ト火ヲ辿リツツ盆には帰ル必ず帰ル

074:焼(円)

ああ焼けた匂いは知らない戦いに負けたことなど忘れてるから

073:谷(円)

通勤は不気味の谷を経由してヒトの顔してホームに降りる

072:銘(円)

ご銘はと聞かれて不意に思い出す過ぎ去っていた風の名前を

071:側(円)

こちら側ではない方にいる、いる、いる、と歯を剥き出してお前は告げた

070:しっとり(円)

しっとりと君を濡らした雨雲はもはや消えたとテレビが告げる

069:排(円)

もろこしの真白い粒を見つけ出し使用している排除の論理

068:沼(円)

両足を緋色の沼に浸すごと歩いてゆけば浴びる熱風

067:手帳(円)

新しい手帳を開く手つきにて真白いシャツのボタンを外す

066:浸(円)

すうすうとミントの味をお互いに浸透させるさびしいあそび

065:砲(円)

砲台のように太鼓は空仰ぎ抱かれながら殴られている

064:妖(円)

ぼくたちが車に轢かれたそのときも妖怪ウォッチは有効ですか

063:院(円)

をんなではないなと思ふ。病院の淡いピンクがひどく似合わぬ

062:ショー(円)

遠吠えをたなびかせ走る窓の灯は(イッツ・ショー・タイム)まだ燃えている

061:倉(円)

待つことは燃えていること水面の煉瓦倉庫の赤が歪だ

060:懲(円)

勧善懲悪なんてないこと知りながら君の掲げた青が痛い

059:畑(円)

ライ麦畑で腕を広げるように笑う君の傷など暴きたいのだ

人は死んだら電柱になるアンソロジー寄稿(C86・1日目、他)(連作・そしてまた夜は)

タイトル通り、人は死んだら電柱になるという設定だけを共有した創作同人アンソロジーに寄稿させて頂きました。 そもそも何でそんな設定のアンソロが……など、詳細は以下の専用サイトをご覧下さい。togetterが面白いです。http://deadendpole.wordpress.com/ …

058:惨(円)

凄惨に笑った君の横に立つここは静かで頬だけ熱い

057:県(円)

訪れていない県名を数えるコンビニのおにぎりの具みたいに