つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

シュレディンガーの傘(みずつき6)

シュレディンガーの傘

 

どこからが雨雲なのかわからない空の下でも無防備だった

ロッカーの遠い密室開くまでシュレディンガーの傘の花柄

曇天に開くてのひら法律が雨になるまであとどれくらい?

紫陽花に香りはなくて暗がりに寄り添いあえば震える睫毛

雨の気配、雨の匂いを遠ざける天井ボードの乾いた白さ

干上がれば点字のようにしろじろといつかひかりはしない 言葉は

 

 

毎年梅雨の時期に実施されている企画、みずつき6に参加しました。毎年、ではないですがテーマが好きなこともあって結構参加させていただいてます。

主催の千原こはぎさん、ありがとうございました。

夜の続き(うたつかい・2017年春号)

夜の続き

 

甘やかに庇護されている夢を見た夜の続きはいつでも朝だ

 

墓所のごと返信のたび増える署名スクロールバーは仕事を終えて

 

花のつく季語という季語ぶちまけた君の狼煙がこんなに綺麗

 

音もなく加湿器は白い霧を吐く目眩むほどの光もあったが

 

ちょっとした生前葬をなんどでもしようよ春って花だけはある

 

 

テーマ詠:お店

駅ビルの花屋が五百円で売る花束に似たやさしさください

 

テーマ詠はかなり前に作ったものの再録でした。

Vuelta(アニポエvol.5「スポーツアニメ特集」)

Vuelta

 

蓋取れば茄子の酢漬けの五日目は食べ頃としてしずもりをりぬ

コンセント挿せばちひさく散る火花ゆめの甘さは遠くなりけり

風戦ぐアンダルシアを映すときブラウン管に立つ砂嵐

消失点 破線であつた白線がいつぽんとなり漕ぐ吾がゐる

ブレーキを握らぬ身体すれすれに傾がせて聞く歓声 旋回(vuelta)  

光りつつ降る雨、やがては土砂降りの雨 車輪は止まれば倒れてしまふ

汗ひとつかかぬ口調でキャスターは選手の心拍数を語りぬ

敬礼をしてやる程度には許すオズボーンの真黒き雄牛

見下ろせばむらがりてある家の灯の愛してるとか軽く言ふなよ

血を啜る顔つきのまま投げられし空のボトルの行方は知れず

 

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