題詠2013
だいじょうぶ、怖くはないよ。カステラの黄色をあげる、たくさんあげる
夏の花みな誇らかに歌いだしそんなことにも傷付いている
銃口を突きつけられた顔をして間違うことを許せない君
ドゥーユーノウ? これがペンだと言うような君の言葉だ(イエス、アイノウ)
悔恨と呼び得るものは何も無く夕暮れが来て影は濃くなる
玉葱の芯に似た冷たさで立つ我らの中の少年少女
あれは星? 触れた指先痛いほど冷やして消えた(あれは、後悔)
おすわりの姿勢で空を見上げればわたしと空のもうふたりだけ
断絶という名の風が過ぎていく夏の日差しの貫く中を
獰猛な獣を抱いて人はみな横断歩道渡り始める
その町の町はずれでは影のない子どもらもみな生きているとか
購入のボタンクリックするたびに闇にちらばる浄財の音
街中を彷徨うルンバの真似をして頭をぶつけながら逃げ出す
お前にもいづれ、と言われしことごとを幾つも過ぎて今は鈍色
それはもうノーコメントでと木漏れ日は道の先まで光って揺れる
期日前投票に似たものを書くいつか此処から離れるための
滅ぶだの終わりだなどともう言えずそれでも見入る赤い満月
奇妙だと思えば何もかも奇妙身体全部を覆ってる皺
何事の不思議なけれど訪れる春を今年も身体に通す
今日もまたアポトーシスの目を逃れ誰かの仲間と分類される
定冠詞ラであることも知らぬまま西洋梨に憧れた日々
感嘆の呟き(tweet)ばかり拡散し私はじっと耳を澄ませる
弟と同じ顔した曾祖父は戦場に子を二人送れり
お辞儀してレベルアップの音を聞く戦闘シーンにいたのか、私
誰そ彼という語を知ってからのこと君だと思う五時の夕闇
何処からをノブレス・オブリージュとするか(仕事先では笑っています)
人の横で静かな水は喉に満ち大きな息を吐(たぐ)り上げたり
変更を保存するかと尋ねられどっちが正解なのか訊きたい
千年も経てばふたりはいないので北極星とは概念の星
この中に埋もれたしとて下向けばラップトップのわずかなる熱