つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

題詠2013

041:カステラ(円)

だいじょうぶ、怖くはないよ。カステラの黄色をあげる、たくさんあげる

040:誇(円)

夏の花みな誇らかに歌いだしそんなことにも傷付いている

039:銃(円)

銃口を突きつけられた顔をして間違うことを許せない君

038:イエス(円)

ドゥーユーノウ? これがペンだと言うような君の言葉だ(イエス、アイノウ)

037:恨(円)

悔恨と呼び得るものは何も無く夕暮れが来て影は濃くなる

036:少(円)

玉葱の芯に似た冷たさで立つ我らの中の少年少女

035:後悔(円)

あれは星? 触れた指先痛いほど冷やして消えた(あれは、後悔)

034:勢(円)

おすわりの姿勢で空を見上げればわたしと空のもうふたりだけ

033:夏(円)

断絶という名の風が過ぎていく夏の日差しの貫く中を

032:猛(円)

獰猛な獣を抱いて人はみな横断歩道渡り始める

031:はずれ(円)

その町の町はずれでは影のない子どもらもみな生きているとか

030:財(円)

購入のボタンクリックするたびに闇にちらばる浄財の音

029:逃(円)

街中を彷徨うルンバの真似をして頭をぶつけながら逃げ出す

028:幾(円)

お前にもいづれ、と言われしことごとを幾つも過ぎて今は鈍色

027:コメント(円)

それはもうノーコメントでと木漏れ日は道の先まで光って揺れる

026:期(円)

期日前投票に似たものを書くいつか此処から離れるための

025:滅(円)

滅ぶだの終わりだなどともう言えずそれでも見入る赤い満月

024:妙(円)

奇妙だと思えば何もかも奇妙身体全部を覆ってる皺

023:不思議(円)再投稿

何事の不思議なけれど訪れる春を今年も身体に通す

021:仲(円)再投稿

今日もまたアポトーシスの目を逃れ誰かの仲間と分類される

022:梨(円)

定冠詞ラであることも知らぬまま西洋梨に憧れた日々

020:嘆(円)

感嘆の呟き(tweet)ばかり拡散し私はじっと耳を澄ませる

019:同じ(円)

弟と同じ顔した曾祖父は戦場に子を二人送れり

018:闘(円)

お辞儀してレベルアップの音を聞く戦闘シーンにいたのか、私

017:彼(円)

誰そ彼という語を知ってからのこと君だと思う五時の夕闇

016:仕事(円)

何処からをノブレス・オブリージュとするか(仕事先では笑っています)

015:吐(円)

人の横で静かな水は喉に満ち大きな息を吐(たぐ)り上げたり

014:更(円)

変更を保存するかと尋ねられどっちが正解なのか訊きたい

013:極(円)

千年も経てばふたりはいないので北極星とは概念の星

012:わずか(円)

この中に埋もれたしとて下向けばラップトップのわずかなる熱