つきのこども/あぶく。

おはなしにならないことごと。

題詠2013

011:習(円)

肩下の左側のみ強張って習い覚えた罵倒語を吐く

010:賞(円)

賞罰の対象でない後悔が網にかかって重くなる羽根

009:テーブル(円)

幾度も畳まれしことその疲弊テーブルクロスの折り目は浮けり

008:瞬(円)

鍋の湯を落とす一瞬流し場はままごとに似た色に染まれり

007:別(円)

やがてくる別れの数を眠る前布団の中で数え続ける

006:券(円)

それはどの券売機にて売られしか君の「普通」になれる切符は

005:叫(円)

お互いの痛みを叫びあうように雨は砕ける道路の上で

004:やがて(円)

手首から歯車の噛む音を聞く蕾もやがて開くのでしょう

003各(円)

諦める儀式の開始 行先の「各駅停車」を「回送」とする

002:甘(円)

嫌われぬための言い訳なら得意「甘さ控えめ」ばかり手に取る

001新(円)

新雪と呼ばれることもなく水になったものらの名を考える